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札幌高等裁判所 昭和32年(ラ)65号 決定

抗告人 鈴木茂夫

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は、抗告人の負担とする。

理由

一  本件抗告の理由は、別紙記載のとおりである。

二  抗告人が頭書の訴訟事件について、証人として、他の証人三津谷時男とともに、昭和三一年六月五日午後一時、昭和三一年七月九日午後一時、昭和三一年九月三日午後一時の各口頭弁論期日に出頭すべき旨の合式の呼出を受けたのにかかわらず、右各期日に出頭しなかつたことは、本件記録によつて明らかである。

三  しかして、(イ)昭和三一年六月五日の口頭弁論期日については、昭和三一年四月二一日、その呼出状の送達を受け、これに対し、抗告人は昭和三一年六月一日付書面(同日、札幌地方裁判所受付。)をもつて、札幌地方裁判所書記官宛に、「六月五日は、公務出張の予定のため出頭致し兼ねるので右様御諒知戴きたく連絡申し上げます。」との不参届をなし、(ロ)昭和三一年七月九日の口頭弁論期日については、昭和三一年六月八日、その呼出状の送達を受け、これに対して、昭和三一年七月三日付書面(同月四日、同裁判所受付。)をもつて、同じく同裁判所書記官宛に、「恰も参議院選挙に伴う投票管理者並に開票事務等の担当のため出席致しかねるので右様御諒知戴きたく連絡まで申上げます七月八日 投票管理者事務 七月九日 開票関係事務。」との不参届をなし、(ハ)昭和三一年九月三日の口頭弁論期日については、昭和三一年七月三一日、その呼出状の送達を受け、これに対し、昭和三一年八月三一日付・同年九月三日、同裁判所受付。)書面をもつて、同裁判所書記官に宛て、「九月三日は公務出張のため出頭致し兼ねるので右様御諒承戴きたく連絡まで申上げます。」との不参届をしていること及び(二)当時、抗告人は千歳町民生課長の職にあつたことが、上記各呼出状の送達報告書並びに抗告人提出の各書面によつて認められる。

四  公務員が緊急やむを得ない業務、緊急やむを得ない出張のために裁判所から証人として呼出を受けた期日に出頭できないときは、不出頭についていわゆる正当の事由があるというべきであるが、抗告人は前記不参届を出したにしても、いかなる業務でいかなる地方に出張しなければならなかつたかについてなんら疎明をしていないし、昭和三十一年七月九日頃、参議院議員選挙が実施せられたことは公知の事実ではあるが、民生課長である抗告人が何故に手を抜くことができないのかについてなんらの疎明もない。のみならず、前記認定事実によれば、出頭すべき口頭弁論期日は、三回とも、いずれも一ケ月以上も前に抗告人に通知されておるのであるから、抗告人としては、事前に、不出頭の理由を疎明して期日の変更を求めうる余裕が充分にあつたものといわなければならない。しかるに抗告人は、各口頭弁論期日に接着して前記認定のような不参届を裁判所に提出しただけである。かかる事実のもとにおいては、抗告人は、正当の事由なくして出頭しなかつたものとして、よつて生じた訴訟費用の負担を免れないといわなければならない。

五  しかして抗告人は、前記各口頭弁論期日に、他の証人三津谷時男とともに出頭すべく呼出を受けていたこと、右三津谷時男も右各期日に正当の事由なく出頭をしなかつたことを理由に、札幌地方裁判所により過料千円に処する旨の決定を受けたことが記録上明らかであるので(右三津谷時男に対する過料決定は、確定している。)、抗告人は三津谷時男と、前記各期日に出頭しなかつたことによつて生じた訴訟費用を平等して負担すべきである。これと同旨にでた原決定は相当であるから、当裁判所は、民事訴訟法第四一四条、第三八四条、第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 石谷三郎 立岡安正 岡成人)

(別紙) 抗告人の抗告理由

控訴人中垣信弘、被控訴人吉田孝夫間の昭和三〇年(レ)第一二六号不当利得金返還事件について昭和三十一年六月五日、七月九日、九月三日の口頭弁論期日証人として出頭すべき旨の呼出に対し其の都度事由を具し連絡致して居りましたもので此の決定に対し納得できません。

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